さらに、このEF63が後ろから、特急「あさま」11両編成を押し上げる編成では、EF63の運転手に難題がのしかかる。運転手は後ろ向きだから、進行方向が全く見えないのだ。振り向いたとしても、進行方向は200mも離れた「あさま」の先頭だ。見えるはずがない。もちろん信号も見えない。
EF63の運転手には、12両先の列車進行方向の安全確認が出来ないのである。それでも、手探りで走らなければいけない。そのため碓氷峠区間には、特別に「車上信号方式(Cab Signal)」が採用されていた。これは、線路に流れる信号情報を機関車が受信するというものである。
受信すると、運転台の表示器に 進行・注意・停止 などが表示されるしくみだ。つまり運転士は前を見ずに、運転台の計器を見て運転していたのだ。この車上信号表示や速度計・電流計・ブレーキ計器・速度照査装置などを常に監視しながら運転していたのである。
このように碓氷峠では、「運転士は列車の最後尾にいて、信号機を見ずに列車全体を操縦する」という、当時の日本の鉄道では極めて特殊な運転形態だった。それでは、進行方向の安全確認はどうするのか?実は、その役目は「あさま」の先頭車両の運転士が行っていたのである。


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